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recette3 バルーン・バースデー(完結)
わあい、僕の魔法菓子! 弾んだ子どもの声が『魔法菓子店ピロート』の店内に響く。
「僕ね、六歳になったから魔法菓子食べるの! だから、このケーキ僕のなの!」
満面の笑みでケーキの箱を抱える幼い子どもは、カウンターに立つ蒼衣と八代にうれしそうに言う。
ケーキの箱を大事に抱える子どもを眺めたのち、二人はほぼ同じタイミングで微笑みを向けた。
「お誕生日おめでとう。家族のみんなで、楽しんでね」
蒼衣は目を細め、穏やかな笑みを浮かべる。誕生日ケーキを渡すときの醍醐味は、お客のうれしそうな顔を見たときだ。
「初めての魔法菓子がうちのケーキでよかったな、ぼうず! ここのケーキは世界一おいくて楽しいぞ!」
「ほんと?」
「ホントのホントだ、おっちゃんは嘘つかないぞ」
カウンターから出た八代は、子どもの前でしゃがんで肩をたたいた。歯を見せて笑う姿は、目の前の子どもと変わらない無邪気さであふれている。子ども慣れしている八代の姿を見た蒼衣は、さすが一児の父は違うな、と思わずにいられない。
「うわーい! お菓子屋のおじちゃんたち、ありがとう!」
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