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私が紳太郎さんと出会ったのは、ある霧の深い日でした。
私は幼い頃に遭った事故のせいで、足を悪くしていて、リハビリも兼ねて、毎朝、家の敷地の中を散歩するのが日課でした。
その日も、朝早くに散歩していたんです。
もうすぐ、家の裏口に差し掛かろうとしている時に、扉に人が倒れているのが見えたんです。
私は、恐る恐る近づいてみると、そんなに怖そうな人でもなかったので、思い切って話しかけてみました。
「大丈夫ですか?」
その人は返事はなく、ピクリとも動きませんでした。
「よほど、お酒を飲んだのかしら。」
そのうち起きるだろうと思って立ち上がった私の目に、血の跡が飛び込んできました。
よく見ると、それは道路から彼に向って、続いていました。
「誰か…誰か!!」
私の声を聞きつけて、数人の使用人が駆けつけてくれたのでした。
すぐに家の中に彼を運び、私は医者を呼びました。
私の家のかかりつけの医者で、いつも来てくれるお年寄りの医者と、初めて見る若い方と二人で来ました。
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