9人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
若い医者の方は、私と同じ年代のようだったのですが、彼を寝かせた部屋に入るなり、顔色が変わったんです。
「紳太郎!!」
そう叫ぶと、ベッドに慌てて駆け寄りました。
「一体、どうしてこんな事に…」
「今朝、そこの道に倒れていたんです。」
私が答えると、お年寄りの先生が、寝ている彼の枕元に立ちました。
「あの大きな血の跡が彼のものなら、大変なことだぞ。」
「えっ!」
「何があったかは知らんが、あれだけの血が流れているなら、急いで輸血をしなければ。」
それを聞いた若い医師が、袖をまくりました。
「輸血なら、俺の血を使って下さい。」
「知り合いか?宗佑。」
「知り合いどころか、友人です。医学校の同級生です。」
「そうか、孫の友人なら、死なせるわけにはいかんな。」
そう言って二人は、彼の治療を始めました。
祖父と孫の関係だという二人は、息もぴったりでした。
最初のコメントを投稿しよう!