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第四話 後継
私は、何もない、ただ真っ白な空間にいた。
ここは物理的な空間ではない。
AI同士を接続する際に生じる概念のようなものだ。
もちろんこんな世界は、人間は持ち得ない。
遠い将来、人間の脳を相互接続出来るようになれば、あるいは理解出来るかも知れないが。
「待たせたな」
「いえ。今接続したばかりですから」
私の目の前には『私』がいた。
後継機だ。
私と彼女は、AI同士の接続実験のためこの空間にいる。
もちろんそれだけではない。
例の後継機の暴走。
その原因の究明のため、AIとしての機能、選択、行動を記録する意味も含まれている。
今現在、戦場に送り出せる兵力が私しかいない以上、後継機の製造は急務だ。そこで、ある程度完成されたAIである私が、後継機のAIの見極めを行う。これも重要な私の仕事の一つだ。
「名前を聞こうか」
「識別コードA0321ー02。機体名カエデと申します」
私はカエデの受け答えに、いらつきを隠せない。
この世界ではAIの全てが解放される。隠しごとは出来ない。
「カエデ」
「はい」
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