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腕を一本持って行かれたが、私はそれを囮に、カエデの頭部に超高振動ナイフを発動させ突き刺した。
ギリギリの闘いだった。
「その件については、私にも疑問がある」
「言ってみろ」
「あの空間は、我々の機能をエミュレートしているはずだ。だがカエデはリミッターを破壊して尚、私に攻撃を仕掛けてきた。カエデの設計に欠陥があるのではないか?」
「それは現在調査中だ」
「ならば私が言うべきことはない」
「暴走の原因は解明されず、検体は破壊。ログを解析しようにも、意味不明なコードの羅列だ。あの時カエデは既に暴走状態にあった。そのきっかけを作ったのは、外ならぬお前、識別コードA0221、お前だ。アヤ」
アシュラムは私の責任だと断じた。
ならばその後の私の処遇は決まっている。
廃棄処分か。
朽ち果てるまで試作機として稼働し続けるか。
二択しかない。
「了解した。好きにするといい」
「その言葉、忘れるな」
アシュラムと男たちは、部屋を去った。
私は一人その部屋に残された。
──どちらにせよ、私はもう用済みか。
そう思うと、なぜだろうか、サブAIが活性化し始めた。
何を伝えようとしているのか。
眼前に、キーワードが浮かび上がる。
悲しい。辛い。寂しい。悔しい。
私には感情を理解出来ないが、それらが示す意味は分かる。
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