第三話 葛藤

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 私はその言葉を合図に、棒状の金具を力一杯握り、引き抜く動作をした。  固定されている部分にあるセンサがオレンジからグリーンに変色した。  腕部が五パーセントの出力ダウンしたのなら、他の部位で補えばいい。  そもそも今回の試験は、各部位の連動試験なはずだ。  私は腰部、脚部の出力を調整し、『五パーセント』分の出力を絞り出した。  途端。  アシュラムの怒号が跳んだ。 「アヤ! 何をしている! 誰が他の部位(パーツ)の出力を調整しろと言った!」  ──何を言っているのだ?  私は『五パーセント』ダウンした左腕の出力を、他の部位を連動させて補っただけだ。  試験内容として、それはその目的から逸脱はしてないはずだ。 「俺は今回新造されたお前の『左腕』の出力テストをしている。誰が下半身でその低下した出力を補えと言った?」 「それならそうと命じればいい。私はそれに従う」 「お前はただのロボットか? そうではないだろう? 人に似せられ、相手の心情を解する」 「ああそうだ。だから『臨機応変』に試験内容の変化に対応している」  どこが不満なのだ?  分からない。     
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