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戦場においては、様々な環境に応じた、多様な対応を迫られる。今回のように『左腕』の出力が何らかの原因で低下した場合、それは戦闘行為におけるバランスに影響が出る。それを他の部位を使って影響を最小限に留める。これも重要な試験なはずだ。
「今回、お前の左腕には新型アクチュエーターが採用されている。先日破壊されたモノより、設計上は一〇パーセント出力が増しているはずだ。なのになぜ五パーセントもダウンしている? 相対差で一五パーセントダウンだ。これは誤差の範囲を超えている」
私は自分の手、左腕を見た。その素材は、人間の表皮と変わらない。人と同じ感触を持つ肌。そして人間の力を遙かに凌駕する力を内包する。
だがこの手は、私の意に反しその全力を出そうとしない。
なぜなのか。
私が増加した出力を抑えているのか?
いや。
それはない。
私はこの試験項目の意図を理解し、全力を出すよう左腕に命じたはずだ。
「私には説明出来ない」
「くそ!」
アシュラムは、憎々しげに、言葉を吐き捨てた。
「もう一度だ!」
ガラスの向こうから、吐き捨てるような、そんな声が返ってきた。
私は、再度金属棒を左手で握った。
だが。
左手が、私の意に反し棒を握ろうとしない。
何かが邪魔している。
意のままに体を操れない。
──何だ? なぜ動かない?
「何をしている!」
そのアシュラムの声に呼応するかのように、私のサブAIが悲鳴を上げた。先日暴走したサブAIだ。
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