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そこには、どこかアヤを彷彿とさせる、柔和な笑みを浮かべた女性の写真がはめ込まれている。
彼女は、かつてアシュラムのパートナーであり、アヤの生みの親でもあった。
アヤをモニタしている船内スピーカーから声がする。だがそれはアヤの声色ではない。
『もうお分かりでしょう? アシュラム』
人間味のある優しい声。そして何より、アシュラムにとって懐かしく、良く知っている声。
「カオル……」
カオル・ユリカワ。
アヤを設計、開発し、その後自らの命を絶った天才エンジニア。
「自分のコピーを残していたのか」
『そう。あなたとの約束のために』
「俺との約束?」
『そう。私はこの子を造った時、自分の記憶をコピーした。あなたは覚えていない?』
アシュラムは、モニタを凝視した。
そして、思い出した。
「……我々、クレイドルの行く末を見届ける──約束だったな」
『思い出してくれたようね』
その声は、アシュラムの胸中に染み入る。
「……そうだったな」
アシュラムは視線をモニタから銀色のロケットに移した。
クレイドルが設立された当初、組織としての目的は医療用の義肢、義足などの技術の開発だった。
平和利用が前提だ。
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