第三話 葛藤

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「一五パーセントの出力向上。これが目標値だったはずだ。それが向上するどころか、旧パーツより五パーセントもダウンしている。結果として、二〇パーセントの出力低下だ」 「はい」 「それとアヤのサブAIの暴走。その因果関係が分からない。それがお前たちの結論か?」  エンジニアたちは沈黙した。おそらくそれは肯定だ。 「事前に提出してもらった初期段階の解析の報告。やはりブラックボックスが絡んでいるのか?」 「……断定は出来ません。しかし我々がアクセス出来ない箇所はそこだけです」 「そうか。分かった」  アシュラムは私に向き直った。 「アヤ」 「何だ?」 「お前の見解を聞きたい」 「私の?」 「そうだ」  私はコンマ一秒迷った。様々な可能性、因果関係、そして先日の暴走。  ──迷うだと? この私が?  AIたる自分が何を迷うというのか。  しかし、実際に答えが出せない自分がいる。  例のロケットが映像として浮かび上がる。  ──何だこれは。何の関連性があるんだ?  私はその思考を一旦振り払い、アシュラムの問いに答えた。  先日の熱暴走、そして制御不能なサブAI。私の見解は単純だ。 「原因は……サブAIを搭載している私の構造的な欠陥だ」  私の目に映るのは、エンジニアたちの狼狽ぶりだ。やはりな、という言葉が頻繁に発せられている。  彼らには責任はない。     
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