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「アヤ? これは命令なの。私たちだって全てを納得したわけじゃない。でもクレイドルが決定した事項は、命令通り遂行する。悲しいけどこれが組織なの。分かって」
数秒の間があった。
『チーフ、いや……アシュラム』
アヤは直結回線を使い、船内スピーカから音声を出力した。
チーフではなく、アシュラムと名前を呼んだ。
「何だ」
『この状況下で後継機を投入するということは、リスクが拡大するだけだ。理念たる武力介入の意義に反する。説明を求める』
「必要ない」
『それでは私たちは殺戮兵器と同じだ。ここで投入される意味がない』
「お前には後継機の統括役を担ってもらう」
『暴走の抑止か』
「そうだ」
『……大量の人間が死ぬ可能性が排除出来ない以上、いくら私が統括したとしても後継機の投入は危険だ。先日の接続実験の件を忘れたのか? 冷静な判断を求める』
しばし沈黙がオペレーションルームを支配した。
「……俺だってこんなクソッタレな命令なんざ……」
胸元を鷲掴みし、ギリっと歯がみするアシュラムの口から漏れた言葉。だがそれは、誰の耳にも届くことはなかった。
アシュラムは渋面のまま、オペレータに向き直った。
「……アヤの行動プログラムを、後継機のソレと同じに書き替えろ」
「え……いえ、それは……」
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