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第七話 経験
アヤは、自分を囲むように動き回る妹たちを一瞥した。
「思想も意思もない殺戮人形か……」
自分もその一つだという自覚はある。
だが今から、それが決定的に違うということを証明しなければならない。
暴走の原因の仮説を立て、それを宣言した。
彼女らになく、アヤにあるもの。
それが決定的な違いを生んでいることを。
──来るか。
まず襲いかかってきたのはサクラだった。
刀身の長い超高振動ブレードを輝かせ、大上段から斬り下ろす。
アヤはそれを半身を引き、紙一重で躱す。
──そんな大振りが当たるものか。
サクラはそれを見て攻撃手段を垂直から水平に変更した。状況から行動への反映がほぼ瞬時だ。これこそアヤの後継機の最大の特徴だった。
サクラは切っ先を水平にし、アヤの無防備な胴体目がけてブレードを薙いだ。それをアヤが感知していたとしても、一発目の斬撃を躱した体勢から、二発目の攻撃を躱す術はない。
そう。ないはずだった。
だが。
アヤの白く長い髪が、瞬時に真っ赤に染まった。自身の身体稼働の出力を最大にした証だ。
「甘い」
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