第一話 星と宇宙と

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第一話 星と宇宙と

1  頬に柔らかい日差しを感じ、目を覚ました。  目に映るのはいつもの天井。  日差しは遮光カーテンの隙間から漏れていた。 「ああ……朝か」  ゆっくりと伸びをしながら体を起こす。  ──心地いい朝だ。  と思ったのも束の間、僕は大きく目眩を感じ、再びベッドに引き戻された。  ここ最近いつもだ。目覚まし時計が鳴る前に目が覚め、次いでめまいに襲われる。  ──受験勉強で余裕なかったからなぁ。  志望した大学へ行きたい。そのために色んな事を犠牲にした。  睡眠時間もその一つだ。  ──疲れが出てるんだ、きっと。  受験期間、この体には相当な無理を通している。めまいくらいで済めば御の字だ。  コンコン。  ドアを打つ軽めのノック。  ──スミカか。  そう思う間もなくドアが開いた。 「リュウ、お早う」 「うん。姉さん、お早う」  いつもの挨拶。いつもの柔らかい笑顔。姉のスミカのいつものスタイル。セミロングの髪を後ろで軽く結い、ゆったりしたスカートを穿いている。姉は二個年上で、この春で大学三年生だ。  でもなぜだろう。  こんなにのんびりした挨拶は久しぶりだと感じる。  毎朝繰り返すこの挨拶は何も変わらないと言うのに。     
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