6章

13/20
前へ
/133ページ
次へ
 舌で転がし、吸って、いつも吟次がしてくれるように馨は覚束ない舌を使う。 「おい…くすぐってぇよ」  だが吟次は堪らずに笑いながら馨の肩を押す。 「…どうせ吸うならこっち吸えよ」  吟次は悪戯に自分の股間を指差す。  立派に屹立したものを前にし、これには馨も困った。口での行為は産まれてこのかた及んだ事がない。  戸惑いを見せる馨に吟次はくすりと笑って「ほらな、無理するこたぁねぇよ。あんたは俺に任せてればいいんだよ」といつも通りに組み敷こうとするのだが、それを馨は拒んで吟次の股間に顔を埋めた。 「ちょっ」  驚いた吟次の声を無視して、馨は下着からすっかり張り詰めて大きくなった男性器を出して先端を口に含む。 「…ん」  吟次は小さく息を詰めた。  馨の舌は口腔に含んだ先端部分を舐めている。舌の平で大きく撫でて入念に愛撫する。独特の匂いはするが鼻につくものではない。自分も持っている男性器だと思うと倒錯感は起きるが、愛しい男のものならば汚いとは思えない。  張り出した括れに舌先を這わす。太い血管の感触まで舌から淫靡に伝わってきて馨は咥えながら身震いをした。  寒々しい空気に裸体でいるせいで馨の肌に鳥肌が立っている。自分のものを熱心に口淫している馨を見下ろし吟次は信じられない心地でいた。  まさか馨がここまでするとは思っていなかったから。  案外見た目に似つかわしくないほど馨が強い自尊心の持ち主だと分ってはいた。だからほんのお遊びで吟次も言ってみたのだが。  今、馨は慣れない舌を動かして自分の前に脚を折って跪いている。  間遠い舞台に一度目をやり、また下の馨を見やる。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加