92人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
「くぅ……」
唇の間から甘い呻きが通過してゆく。それに誘われるように吟次は馨についばむような口付けを落とす。
「全部入ってる」
吟次がこれ以上ないぐらい甘く目を細めて微笑んでいる。
「あんたと一つになったみてぇだ………」
体温は溶け合い、外からも中からも交じり合う。
狂おしいほどの劣情は生まれないが、じっくり互いを感じるような交わりだった。
「…吟次さん……」
溢れんばかりの感情を胸で詰まらせ馨は手を伸ばす。これ程まで満たされた感覚は初めてだった。
吟次は頬を寄せてくる馨を受け止め、強く抱く。
穏やかな時間の中、ふたりは静かに安らかな抱擁に酔う。
最初のコメントを投稿しよう!