6章

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 吟次は馨の視線に少し照れた様子で「あんたも言えよ」と強請してきた。せがまれた馨も困ったように微笑んで静かに睫毛を下ろす。 「愛していますよ…」  口に出した瞬間に、胸を焼く。  心身にずしっとくる重さは何なのだろうか。  想いを形に出来ないからこそ人間は言葉を駆使してゆく。普段何気なく聞き慣れてしまった言葉が産まれ立ての赤子みたく新鮮に響く。 「………愛していますよ……」  疑いもなくそう言える幸せは、この人からしか与えられない。 「俺もだ」  至上の幸福をもたらす男はゆっくり穏やかに笑った。
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