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「いつ話すべきかを自分で学習しなさい。そして、私が欲しいと思う言葉をちょうだい」
この記録装置は、もともと複雑な演算は出来ない。観察及び観察したものの状態をそのまま記録をすることだけを目的にして作られた。だが。マルベリーが手を加え、自律思考機能も付与された。可動式の腕も自律思考機能と連動しているので、そのうちに自分の意思で動かせるようになるのだろう。
自分、という感覚は、正直まだよくわからない。不思議、という言葉が恐らく今の状態に最も近い。自分とは、どの部分までを示すのだろう。どこまでが自分なのだろう。まだよくわからないが、自分を示すものがどんどん広がっているような気もする。押絵の部分に、腕に、スピーカーから出る音声。摂氏マイナス二百七十度に曝されている部分も自分なのだろうか。外側の識別名も自分なのか。でも、そこに書かれている識別名はマルベリー。マルベリーはマルベリーの名前になった。では自分は、カイナットでありカイは、マルベリーの一部ということか。
記録装置が熱を持ち始めた。考え始めると止まらなくなる。これが自律思考か。冷却のため思考を一旦中断し、観察中心に切り替える。
今、マルベリーは眠っている。全てのパネルを納め終えて、笑って、ばったりと倒れた。作業中に食事は摂っていたが、全て流動食に変えていた。栄養は必要なだけ摂取していたはずだが、睡眠時間は普段の三割程度しか取っていなかった。そのため、疲労が上回っているようだ。今は、話す時ではないと判断する。
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