1人が本棚に入れています
本棚に追加
ふう、と一息吐くと、マルベリーは僕にもたれかかる。この場合の僕は、パネル上の押絵の部分を示す。僕は両方の腕を稼働させて、マルベリーを抱きしめる。
「うん、うん、上出来」
言いながら、マルベリーは僕の腕をポン、ポン、と叩く。
「前にこうやったら褒められたから、覚えていた」
記録装置の温度がまた少し上がる。
「うーんと、経験はもちろん大切だけど、どっちかっていうと雰囲気から読み取って欲しい」
マルベリーの顔は見えないが、声色から、僕の言葉が百点満点ではなかったと認識する。記録装置の温度が下がる。雰囲気から読み取る、を学習要の案件とする。
マルベリーの膝の上で、タブレットが「ポーン」と音を立てた。
「あれ、誤動作かな。調整しなくちゃ」
言いながら、マルベリーはタブレットを持ち直す。僕は邪魔にならないよう、腕の位置をマルベリーの肩へずらす。
「うそ」
マルベリーは画面をタップする。ひとつの星が拡大される。
「ねぇ、見て。これ」
マルベリーは僕の「顔」の前にタブレットの画面を差し出す。
「大気の主な成分が窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、なの、この星」
「母星と同じだ」
「近くに太陽に該当しそうな星もあるわ。一億五千万キロ離れてる。距離もちょうどいい。たどり着くまではこの地点からだと、一週間ぐらいね。もう少し近くに行けば大きさとか密度とかもわかると思うけど……ねぇ、カイ。もしかして、見つけちゃったかな? 私」
マルベリーは僕の「顔」を見る。口元がにやけている。
「これ、例の資源のある星、なんじゃない?」
「可能性が高い」
「やったー!」
マルベリーは勢いよく立ち上がる。手元にあったタブレットが滑り、そのまま床に叩きつけられる。
最初のコメントを投稿しよう!