A17465Mulberry

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 ふう、と一息吐くと、マルベリーは僕にもたれかかる。この場合の僕は、パネル上の押絵の部分を示す。僕は両方の腕を稼働させて、マルベリーを抱きしめる。 「うん、うん、上出来」  言いながら、マルベリーは僕の腕をポン、ポン、と叩く。 「前にこうやったら褒められたから、覚えていた」  記録装置の温度がまた少し上がる。 「うーんと、経験はもちろん大切だけど、どっちかっていうと雰囲気から読み取って欲しい」  マルベリーの顔は見えないが、声色から、僕の言葉が百点満点ではなかったと認識する。記録装置の温度が下がる。雰囲気から読み取る、を学習要の案件とする。  マルベリーの膝の上で、タブレットが「ポーン」と音を立てた。 「あれ、誤動作かな。調整しなくちゃ」  言いながら、マルベリーはタブレットを持ち直す。僕は邪魔にならないよう、腕の位置をマルベリーの肩へずらす。 「うそ」  マルベリーは画面をタップする。ひとつの星が拡大される。 「ねぇ、見て。これ」  マルベリーは僕の「顔」の前にタブレットの画面を差し出す。 「大気の主な成分が窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、なの、この星」 「母星と同じだ」 「近くに太陽に該当しそうな星もあるわ。一億五千万キロ離れてる。距離もちょうどいい。たどり着くまではこの地点からだと、一週間ぐらいね。もう少し近くに行けば大きさとか密度とかもわかると思うけど……ねぇ、カイ。もしかして、見つけちゃったかな? 私」  マルベリーは僕の「顔」を見る。口元がにやけている。 「これ、例の資源のある星、なんじゃない?」 「可能性が高い」 「やったー!」  マルベリーは勢いよく立ち上がる。手元にあったタブレットが滑り、そのまま床に叩きつけられる。
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