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「私の知識と技術をナメないで。学習ノルマだって滅茶苦茶早く終わらせたし、愛のちからでちょちょいのちょいだよ!」
「マルベリーの知識と技術でも、それは不可能だ」
「なんでよ」
「資源のある星にたどり着くことが、この船の目的。僕は、ああ、ここでいう僕は、記録装置と、それを挟んでいるパネル、つまりは船の扉そのものと、マルベリーが付け加えた押絵や腕やスピーカーや自律思考機能といったすべてを含んだ存在を示すのだけれど、後から付け加えられたものを除くと、僕という存在は、航行の記録を残しておく装置兼、船の唯一の出入り口。基本的な機能として、まず星に辿り着いたら、扉は自動的に開く。それと同時に航行の記録装置は止まる仕組みになっている。星にたどり着いたら、別に設置されている開拓用の記録装置が作動を始めて、航行用は記録機能を停止し、再生のみを行うようになる。新たに何かを学習することは出来なくなる。自律思考機能も記録装置と連動しているから、合わせて動作しなくなる。あとは単純に開閉するだけの扉になる」
「つまり、星に着いたらカイは勝手に開いて、同時に記録装置としての動作が止まるってことね。別に、動作が止まるっていう機能をプログラムから削除すればいいだけだわ」
「この船の中の装置は、全てに必要最低限の機能が与えられている。学習装置も、合成装置もそうだし、僕も例外ではない。初期機能は必要最低限のものだから、それ以上削ることが出来ないようになっている。最低限のものを削ったら、乗組員の生命が危険に晒される可能性が高いからだ」
「……星に着くと同時に動作停止、ということを、プログラムから削除することができない?」
「そういうことになる」
「カイに腕を付けたり、自律思考機能を付けたりは出来たじゃない」
「乗組員の学習の成果を試すために『船内の設備に何かを付け加えること』は許されている。だが、削ることは許されていない」
「カイは私にとって大切なの。特別なのよ。わかってるでしょう?」
「記録装置としての僕も、出入り口としての僕も、この船の機能だ。マルベリーと、後に続く人達の役に立つのが、僕の役目」
顔色に変化あり。呼吸、心拍数に乱れあり。
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