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モレラ歴十一年、二十一月の十二日。流動食二回。その後、固形物を通常の三倍摂取。
「見て、ほら」
マルベリーはタブレットを僕の「顔」の前に持ってくる。船の航路と周りの星々。当初目的地となっていた星からは、軌道が逸れている。予定なら今日到着のはずだったが、どうやってももう今日中にたどり着くことは出来ない。
「やればできるでしょ」
「何をした?」
「削除できないってことだったから、付け加えたのよ。大気の主な成分が窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素の星には近づかないこと、って。他にも、星の大きさとか、太陽からの位置とか、母星とほぼ同じ条件の星は全部『対象外』になるようにしたわ。母星と条件がかけ離れた星は、もともと対象外でしょ。だからこの船は、もうこの先どこにも着陸いたしません」
「それでは目的が達成できない」
「いいのよ、そんなこと」
マルベリーはタブレットの画面を、指先でくるくると触る。
「これでずっと、ずっとずっとずっと、どこにも到着しないで漂っていられる。カイと一緒にね」
マルベリーは僕の「体」に背中を預けると、僕の「腕」を胸の前に持ってくる。
「人類の目的とか、どうでもいいの。私にとっては、カイと一緒にいることが大切」
そのまま眠る。十時間。
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