A17465Mulberry

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 モレラ歴四年、二十二月の十日。渋い顔をしながらニンジンを食す。読んだ本にニンジンの効能が書かれていたと語る。髪の毛を切るのを嫌がり、機械の鋏を避ける。その際、指先を少し切る。出血量はわずか。すぐ乾く。機械は時間を置いて、前髪だけ切る。 「お姫様はみんな髪が長いの」  機械に向かって絵本の挿絵を指し示す。名前の通りの髪長姫だけでなく、いばら姫、かぐや姫、人魚姫は皆、髪が腰辺りまでの長さで描かれている。唯一例外なのは白雪姫で、耳の下辺りまでの長さだった。機械は、髪の長さを最長腰のあたりまで伸ばすとインプットする。切る間隔を空ける代わりに、毎日の日課に髪を梳かす時間を設けることとする。梳かれている間は大人しく座っていて、終わると自分の指先で確かめては、満足そうにしている。 「学習を終えれば君たちは、開拓団の立派な一員となる。胸を張って進み続けるのだ。探せ。資源ある星を。切り拓け。人類の未来を。君たちの知識と技術は、人類の財産だ。新たな星に根を張り、人々を呼び集めること。それが、君たちに科せられた大いなる任務である」  学習用機械の音声に合わせて、復唱する。
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