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『顔を赤らめる。顔を隠す。恥ずかしい。その概念を検索する』
「うーん、機械っぽさが抜けないねぇ。徐々にいじっていくかな」
『徐々にいじる。改造をする、という意味と認識する』
「そうそう。私の同居人にふさわしい、良い男になってもらうから」
『カイナットは、カイ、性別は男。記録する』
「思っていること全部を口にしなくてもいいんだよ。って、言ってもわからないか」
『カイは良い男になる。改造される』
「できればさ、名前呼んでもらったり、会話とかしたいんだけど。まずは名前、呼んでみてよ」
『カイナットはカイ』
「それは君の名前及び愛称。ずっと一緒にいるんだから、私の名前知ってるでしょ? ほら、ラプンツェルとかさ、チルチルとミチルとかさ、ジャン・バルジャンとかさ、本の中の人間にだって名前はあるんだから、私にもあるでしょ? どこかに記録とか、名札とかあるんじゃない?」
『外側のパネルに、識別名が貼付されている。識別名は摂氏マイナス二百七十度に常に曝されている』
「摂氏マイナス二百七十度って、寒いわね。さておき、識別……名? 名前ってことだよね? それかも。なんて書いてあるの?」
『A17465Mulberry(マルベリー)』
「マルベリー! なんか可愛いね! もうそれでいこう。ていうかきっと、いや絶対それだよ、私の名前! 私は今日からマルベリー! さん、はい」
『耳に手を当てて、こちらを見ている』
「記録ストップ! 私の名前を言って! さん、はい」
『再び耳に手を当てて……』
「やめてー! さん、はいって言ったら、マルベリーって言って! ほらいくよ、さん、はい」
『マルベリー』
「やったー! そうそう、この感じ! 人に名前を呼んでもらえるって、いいねぇ」
『マルベリーは満足そうにカイを見ている。体温が平熱よりも二度程上がっている。心拍数も上昇傾向。だが発熱しているわけではなく……』
「うん、ちゃんと改造するから覚悟してて」
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