A17465Mulberry

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『顔を赤らめる。顔を隠す。恥ずかしい。その概念を検索する』 「うーん、機械っぽさが抜けないねぇ。徐々にいじっていくかな」 『徐々にいじる。改造をする、という意味と認識する』 「そうそう。私の同居人にふさわしい、良い男になってもらうから」 『カイナットは、カイ、性別は男。記録する』 「思っていること全部を口にしなくてもいいんだよ。って、言ってもわからないか」 『カイは良い男になる。改造される』 「できればさ、名前呼んでもらったり、会話とかしたいんだけど。まずは名前、呼んでみてよ」 『カイナットはカイ』 「それは君の名前及び愛称。ずっと一緒にいるんだから、私の名前知ってるでしょ? ほら、ラプンツェルとかさ、チルチルとミチルとかさ、ジャン・バルジャンとかさ、本の中の人間にだって名前はあるんだから、私にもあるでしょ? どこかに記録とか、名札とかあるんじゃない?」 『外側のパネルに、識別名が貼付されている。識別名は摂氏マイナス二百七十度に常に曝されている』 「摂氏マイナス二百七十度って、寒いわね。さておき、識別……名? 名前ってことだよね? それかも。なんて書いてあるの?」 『A17465Mulberry(マルベリー)』 「マルベリー! なんか可愛いね! もうそれでいこう。ていうかきっと、いや絶対それだよ、私の名前! 私は今日からマルベリー! さん、はい」 『耳に手を当てて、こちらを見ている』 「記録ストップ! 私の名前を言って! さん、はい」 『再び耳に手を当てて……』 「やめてー! さん、はいって言ったら、マルベリーって言って! ほらいくよ、さん、はい」 『マルベリー』 「やったー! そうそう、この感じ! 人に名前を呼んでもらえるって、いいねぇ」 『マルベリーは満足そうにカイを見ている。体温が平熱よりも二度程上がっている。心拍数も上昇傾向。だが発熱しているわけではなく……』 「うん、ちゃんと改造するから覚悟してて」
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