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彼のやる事成す事は本当に面白い。授業中、眠くなったら起こしてほしいと友達にピコピコハンマーを持たせていた(いくら叩いても起きず、ピコピコうるさいだけで、授業が中断されたそうだ)。文化祭の出し物で女装する事になると、「俺は遊びではしない」と宣言して、当日の朝、知り合いの人妻の「時子さん」に妖艶なメイクをしてもらい、ドラァグクイーンに扮して優勝した。しかしあの時の赤いスパンコールの衣装は、本当に美しくて似合ってた。
水島のやらかしてきた事件を思い出している内に、部室のドアが開いた。なんと水島本人だった。綾美ちゃんはどうしたのだろうか。
「ごめんやけど、今日綾美は来おへんわ」
「そう。明日は来てくれるかな」
「その事やけど、話したい事があるねん」
部室は私一人だけだ。そんなに聞かれたくない話なのだろうか。とりあえず私はキャンバスに向かい合い、水島を斜め前の椅子に座らせた。
「話って何」
彼は組んだ脚の膝を両手で引っ張るように体を仰け反らした。私とは目を合わせず、五分くらい経ってから、窓の枯れ木を眺めて話し始めた。
「俺、恋愛ではなく、知り合いとして太田さんの事好きやで」
「はぁ」
「兄ちゃんの彼女で良かったと思う。
それはそうと、太田さんって赤色好きやん? 何でなん?」
まさか血塗れの光景が理由だなんて言えないし。答えあぐねているとまた話し出した。
「俺さぁ、太田さんに何回もヌード描いてもらってるやん?そん時って、太田さんと目ぇ合うやろ。
でさぁ、絵ぇ描いてる太田さんってさ、人殺しそうな目をしてるん、知ってた?」
「・・・嘘」
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