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水島にも何かを見抜かれたような気がして、思わず手を握り締めてしまった。でも、私、何も疚しい事なんてしてないはず。ましてや人なんて殺した事は無い。
「太田さん」
水島は目だけを私に向けた。
「俺、綾美の事が可愛いから、殺人鬼みたいな目をして絵を描くあなたと二人きりにするのが怖い。
だけど、あなたは赤色を使う時だけ、そんな目をしてるだけで、ほら、あのゼリーポンチの絵とかは、とても気さくな感じが絵から伝わってくるねん。
やから、あなたは一回、赤色で絵を描く事をやめてみるべきやと思う」
それから水島は、気丈なフリをしている私の方を見てにこやかに笑いかけた。
「きっと、太田さんは、好きな赤色に、何て言ったらええかなぁ、囚われてるような気がする」
「・・・好きな色なのに?」
「うん。やけど、あなたのその丸い目が鋭く怖くなるの、俺は好きやけどな。
あ、兄ちゃんに嫉妬されそうやから黙っといてな」
水島はまた一週間後と言って、朗らかに部室を出て行った。彼を侮っていたのかもしれないと、私はまだ何も描いてないキャンバスと共に取り残された。
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