5.書道室

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「それは半分嘘やな。男って、女の中身を一発で見抜く事はできひんし、見た目から恋愛は始まるもんやし。 やから見た目がきっかけやで」 と一蹴された。 けれど、亮平の言う通りかもしれない。征一は、 数回しか見たことが無いが、千代子の目がもっと丸くなるところが好きだ(あと、滑らかな太ももも)。何回かデートみたいに(というには親しくないのだが)四人で美術館に行った時、千代子は気に入った作品を見透かそうとじっと見つめるのだ。自分も作品と同じように気に入られて見つめられたい。 しかしそんな時は来るのだろうか。最近太田と目が合わない気がする。何か嫌われるような事をしたのだろうか。・・・今日は理科棟に寄って亮平達と帰ろう。 そう落ち込んでいた矢先、ドアが開いた。先生かと思い振り向いたら、千代子がいたので危うく筆を落としそうになった。 千代子が来てから20分、何故か気まずい雰囲気になっている。千代子は最初、先日スケッチした征一の絵を渡しに来たのだった(ヌードではない)。珍しく、色を付けず鉛筆だけで描かれている。亮平や雫は(雫は征一達の幼馴染だ)、赤や青で彩られていたのに。 (手抜きなんやろか。でも太田は真面目な人間やしちゃうな) とりあえずありがとうとは言ったものの、絵を渡してくれた千代子は不機嫌そうだ。     
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