4人が本棚に入れています
本棚に追加
7.主演のお姫様
次の日は風紀委員会があり、私が部活に行ったのは木曜日の放課後だった。水島に言われてから、高二の時の小柴の事件を思い出していた。あれ以来、私は人殺しのような目で、絵を描いていたのだろうか、赤色限定で。
ぼんやりとモネの画集を見ていたら、水島が確認しに美術室に入ってきた。数少ない部員達は声をかけたが、彼はおざなりに返して私の前に座った。
「今日描いてないやん、ちゃんと守ってるんやな」
「そりゃ描きたいもの、一週間くらい我慢出来るよ」
「綾美はぼーっとしてるけど、一応来週は付き合うように言っといたから。それで、今日は伝言しに」
「伝言?」
「そ、彼女の希望がありまして」
水島はモネの晩年の睡蓮の絵を見て、「これはボケてるなぁ」と笑った。
「ヌードが無理とかかな」
「それもあるけど、薄い布とかを被るなら足とか出してもええって。
それよりも、色と今後に関して指定があんねん」
「今後?」
「そ。 まず色は、綾美の好きなオレンジ色を中心に描いてほしいこと。
次に、その絵を天文ドームの階段の壁に飾りたいこと」
最初のコメントを投稿しよう!