7.主演のお姫様

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「Mと言うか、俺、自分の憧れは『テイク・ファイブ』に出てくる男やから」 その曲を知らないと言ったら、水島はおすすめのジャズ曲について語ってくれた。 「それじゃ、来週頑張ってな」 水島は先に電車を降りていった。 電車に揺られながら、絵の構想を始める。色まで指定されたのは始めてだ。色は、数少ないヌードモデルのイメージカラーで描いてきたので、ついでに綾美ちゃんのイメージカラーを考えてみる。私の中では赤色を連想させる女の子だったのだが。まぁ、赤とオレンジは近いし、外れてはなかったようだ。 最寄り駅で降りて、地下から地上に出ると、冬の夕暮れの灰と紫を軽く混ぜた空気を吸った。学校を出る時は太陽と氷が一緒に溶けたような夕空だったのに。けれども、一日ずつ、灰色の気配が薄まって紫だけでなく青が濃くなっている。     
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