8.高貴な隠れ処

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8.高貴な隠れ処

週が変わり、遂に火曜日がやってきた。私が地学部の顧問の河合先生に許可を取り、正式に綾美ちゃんを天文ドームに受け入れた。ちなみに綾美ちゃんは天文ドームの床の下に自分の宝物を隠しているので、それを引っ張り出してもらった。クッションや天体図鑑など見慣れた物から、入沢康夫という人の詩集、喫茶ソワレの毎月変わるカード、オルゴール、ビー玉、トランプ、ポテチなどのお菓子類も出てきた。 「・・・トランプは一人でやるの?」 「ううん、りょーへーや雫がたまに来たらやるの。ポテチはお兄ちゃんの」 どうやら煙草は水島のらしい。河合先生が立ち会いじゃなくて良かった。 「それじゃ服脱いで、このシーツを被って。ポーズはどうする?」 「ドームの開いた景色が見えたら何でもいい」 「それはどの方角で?」 「西が良い、夕焼けが見えるから」 夕焼け好きなの、と綾美ちゃんは初めて微笑んだ。     
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