8.高貴な隠れ処

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そうやって私の無色だった世界は色付いて、生き始めたのだ。彼らには感謝しかない。小柴を傷付けたのを彼らのせいにはしないし、お陰で今まで、絵を描くきっかけになったのだ。でも私は、そろそろ赤だけを見つめ愛でる事を卒業しなければならない。 「・・・あたし、四月から高校生になるでしょ」 綾美ちゃんは、何とか高校に上がれるのだった。 「高校生になったら、もう授業サボる事やめるの。高校は厳しいから。 それに、放課後ここで一人で過ごすより、雫と過ごしたいの。あたし、雫の声好きやから」 聞けば、吉野は止めていた声楽を続けるかもしれず、もしかしたら彼女の前からいなくなってしまうかもしれないという事だった。私はそれがどういう事か分からなかったが、綾美ちゃんがこんな相手の事を深く考えているとは知らなかった。 「お互い才能ある人好きになったら大変やね」 「とりあえず、吉野とは上手くいくと思うよ。頑張って」 綾美ちゃんは、始めて女子と恋バナをしたと、白いカーテンに顔を埋めてころころと笑った。 後は目に焼き付けた記憶を元に作品を色付ける。ありがとうと綾美ちゃんに伝えたら、綾美ちゃんは肉まんにかぶりつきながら頷いた。 「ごめんなさい、寒かったでしょう」 「風邪引いたら学校休めるからええよ」 「さすがに中三最後だから、卒業前ぐらいは健康的に学校行くものよ」 「最後かぁ・・・。千代子先輩、卒業しちゃうの?」 「当たり前よ」     
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