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「ちょっと昔の事思い出して」
「赤色?」
「そう。あたし、赤色って言葉知らなかったの」
「それいつ頃?」
「実の両親が死んだ時」
彼は何と返せば良いのか分からなくなって、少し黙ってしまった。でも、私は彼の無駄な事を言わない所が好きだ。大袈裟に同情したり、変に明るく振舞おうとされるのは嫌。
「何て返せばええんか分からへんわ、ごめんな」
「全然構わない。だって悲しくなかったから」
「そう。ならいいや」
本当は興奮して感動してたなんて言えないが。
私の感情を読み取ってくれる、彼の茶色の眼鏡のフレームと横顔の表情は端正で好ましい。そう言われてみれば、彼は生徒会長を2年も務めてたいたのだ。
「ところで、太田はまだ美術部なんだよね。最後の作品はどうする気なん?」
あなたのヌードを描きたいと口にしたら、小柴は俺の体貧弱やからとか言いながら真っ赤になった。去年の9月、一緒に寝た事を思い出したのだろう。今更恥ずかしがるところが、奥手の彼らしい。
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