1.初めての色

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「ちょっと昔の事思い出して」 「赤色?」 「そう。あたし、赤色って言葉知らなかったの」 「それいつ頃?」 「実の両親が死んだ時」 彼は何と返せば良いのか分からなくなって、少し黙ってしまった。でも、私は彼の無駄な事を言わない所が好きだ。大袈裟に同情したり、変に明るく振舞おうとされるのは嫌。 「何て返せばええんか分からへんわ、ごめんな」 「全然構わない。だって悲しくなかったから」 「そう。ならいいや」 本当は興奮して感動してたなんて言えないが。 私の感情を読み取ってくれる、彼の茶色の眼鏡のフレームと横顔の表情は端正で好ましい。そう言われてみれば、彼は生徒会長を2年も務めてたいたのだ。 「ところで、太田はまだ美術部なんだよね。最後の作品はどうする気なん?」 あなたのヌードを描きたいと口にしたら、小柴は俺の体貧弱やからとか言いながら真っ赤になった。去年の9月、一緒に寝た事を思い出したのだろう。今更恥ずかしがるところが、奥手の彼らしい。     
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