2.放課後の宝石

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そんな理由でモデルを探すべく、放課後に理科棟をふらついていた。そこでまず出会ったのが綾美ちゃんだった。この学校は中高一貫のように、理科棟は共同で使うため、中学の科学部なども教室を借りて活動していた。綾美ちゃんも中学に入学したばかりだったが、既に授業をサボるために理科棟に入り浸っていた。彼女は高校しか使えない天体ドームを根城とし、クッションやら重い天体図鑑やら持ってきて居心地の良い場を作っていた。しかし高校の地学部が、新入部員を呼び込むため放課後に天体ドームを解放する事になったため、その日の放課後は根城を(人に知られずに)追い出されたのだった。私は一階の階段の踊り場で、暇を持て余していた彼女に声をかけたのだった。モデルを頼んでみたものの、綾美ちゃんはうんとも嫌とも言わずはっきりしなかったので、私はメアドを丁寧に押し付けて、少し嬉しくなりながら帰った。 「・・・うちの可愛い妹にヌードを頼んだ太田さんですか?」 翌日の放課後、綾美ちゃんのメール通りに書道室の前に行ってみると、彼女の他に男子が二人いた。黒髪の少年は水島亮平で、もう一人の綾美ちゃんに似た人は小柴征一だった。 「こんにちは、俺は水島亮平です。中学二年で、綾美の従兄弟です」 美しい顔立ちだと見つめている内に、違和感を感じるようになった。三人とも、あまりにも顔が似ている様な気がしたのだ。従兄弟でも、こんなに似るものなのか。 「本当に従兄弟だったらすごい」 小柴が恥ずかしそうに自己紹介している途中に、思わず口を滑らせてしまった。失礼だったと謝ろうとする前に、水島が吹き出した。 「兄ちゃん、この人きっと絵が上手やわ。それに少なくとも下心は無いやろ」 「下心なんて、失礼だけど無いわ」 「ごめんね、太田さん・・・」 「でも、りょーへーが言ってたよ。 女性やからて安心したアカンて」 「亮平!! お前綾美に変な事教えたやろ」 「失礼な! 可愛い綾美の事思ってやん、心外やわ」 「りょーへーがそう言ったら、あたしが自分で可愛い言うてるみたいやから、やめて」     
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