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店内は旅行客やSNS狂らしき大学生しかおらず、私たちが一番若い客だった。けれども、セーラー服と詰襟が味方して、この場に一番馴染んでいた。
「制服は可愛ければアホな学校って言われるらしいけど、ほんまなんかな」
「お金の掛け方からそう言われてるんかもな。それよりはよ決めて」
メニューを開いてみると、「ゼリーの誘惑」という言葉が目に入ってきた。
「あたしゼリーポンチ」
「おお、流石お嬢さん。常連ですね」
「うるさい」
水島はゼリーワインを頼もうとして、小柴にも怒られた。とりあえず私もゼリーポンチを頼むことにした。
私たちが座ったのは、窓際ではなく、壁際に水色のランプが置かれている所だった。壁には葡萄の彫刻が施されており、青い光を受けて艶やかに目に映った。そう言われれば、日光が当たらないため、私たちのセーラー服の白さは、光の青色を際立たせ、反対に小柴たちの詰襟の黒さは、その光を静かに吸い込んでいるようだ。それに気付くと、すぐにでも絵の中に閉じ込めたいと焦りそうになった。
「太田さん、聞いてる?」
先程の話の途中だった。水島曰く、彼は本当は小柴たちの母親の子であり、父は彼女の養父だそうだ。そして子供たち3人顔が似ているので、ややこしいから「従兄弟みたいな親戚」として通してるそうだ。
「それはややこしい」
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