CH1 Raindrops

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CH1 Raindrops

「こんにちは、今日からここでハウスキーパーをいただくローズです。よろしくお願いします」 家の扉を開けると、そこに《シベリアン・ハスキー》が立っていた。彼女は僕よりも頭一つ分高く目の前にいるとその風貌もあってかなりの威圧感がある。彼女はその時精一杯微笑みかけていたのだけれど、僕にしてみれば突然やってきて恐怖と嫌悪感をもたらす異形の存在でしかなかった。  何も言わず簡単に会釈をして中へ招き入れる。ここにいるべき人間を一人失ったばかりだというのに、そこへ見ず知らずの存在を住まわせるなんて本当はしたくない。でもこれは仕方ないことだと自分に言い聞かせる。今の僕と父さんだけではまともに生活していけないと分かっているから。あの笑顔はもうこの家に帰ってくることは無いのだから。  あの日と同じように、今日も外で雨が降っている。  本来そこでは上から大量の水が落ちてくるという現象は必要じゃない。環境整備マシンをもっと増やすだとか方法はあるはずなのに、あえて貴重な水を使ってまで降らせるのはただ掃除をするだけでない他の理由があるんだろう。ドームの設計者たちは遥か遠くの地球を懐かしむ何かが欲しかったのかもしれない。     
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