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からかいにうんざりしている僕に対して、彼女は黒くて丸い目を少し細めてくすりと笑う。こんなふうに僕らはもう気の置けない会話ができるまでになっていた。ローズのことは「母さんの代わり」じゃなくて「姉さん」として接するのが、僕にとって一番いい距離感だと感じている。これまで使われていなかった4つ目の寝室が彼女専用のスペースとなっていて、時々人間とは違う仕草にどきっとすることもあるけれど、家族の一員として寝食を共にすることにもう違和感は覚えなくなった。
「全くもう……家の中なんだからせめて一息つかせてほしいよ」
シャワーは後回しにして、僕は椅子に座ってスクリーンのスイッチを入れた。この時間はニュース番組が大半を占めていているため、適当にチャンネル切り換えていけば5分で主要トピックは把握できる。その途中、この間買いに行った彼女自身の服に取り掛かりながら横からローズが口を挟んだ。
「何か目ぼしい話題はありそう? 私全然そういうことは知らなくって」
「え、昼間のニュースとかは見たりしてないの? 誰もいないんだから自由に使っていいのに」
「私はあくまで雇われの身だから勝手にいろいろ扱ったらいけないの。契約書にちゃんと書いてあったでしょう――それどころじゃなかったのは分かるけれど」
「後で目を通しておくよ。それから放送を見るのに許可が必要だったら、父さんに言って何とかしてみる」
「ありがとう。私も相応の仕事をするように頑張るから」
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