CH1 Raindrops

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 そんな変わり果てた父子間をなんとかしようと、父さんはあるサービスを受けることに決めた。住み込みで家事を代わりに担ってくれるハウスキーパーを雇うことにしたのだ。一般的にハウスキーパーと言えばロボットが主流だが、定期的なメンテナンスが必要かつ高額の修理費で未だに上流階級にしか普及していない。逆にいえばそれを維持できることが一種のステータスでもある。そこへ新たに参入してきたのが生体工学の分野でトップシェアを誇るプレアデス社。労働力として遺伝子操作生物を創り出しているこの会社は、これまで重労働や危険な作業に限定されてきた派遣先を拡大させ、ロボットよりも身体能力は大分劣るが安価であることから以前にも増して業績を伸ばしている。トランスジェニックは人間と同様の仕事をこなすが法律上は動物扱いで、機械と違いメンテナンスも修理も必要ないため汎用性もこちらの方が有利だ。  僕と天然木製テーブルを挟んで座っているローズはそのトランスジェニックの一種である《アヌビス》、いわゆる犬人間だ。彼女の場合犬種はシベリアン・ハスキー、割と大きな体格で体力のいる仕事が得意らしい。大きな口と三角耳の狼みたいな顔、白と黒の毛皮、指先の小さくて鋭い爪。大昔のホラー映画からそのまま出てきたような怪物、その時僕はローズのことをそんな風にしか思えなかった。 「……あの、お父さんから話は聞いていると思うけれど、これから半年間二人が学校と仕事に専念できるよう私が家事全般を任されることになりましたローズです。これにあなたの名前でサインしてもらえれば早速仕事に取り掛からせてもらいます」     
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