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玄関を開けて居間を覗くと、ちょうどローズが洗濯物を畳んでいるところだった。くたくたになった父さんの仕事着のしわを丁寧に伸ばしている。テーブルには洗って真っ白になった食器と夕食の材料が置いてあり、彼女の懸命な働きぶりが見て取れた。 テーブルの上の買い物袋からは長いパスタが飛び出していて、夕食は僕の好きな欧風スパゲッティらしい。
「あ、お帰りなさい。今日は何か嬉しいことでもあった? いつもなら少し俯き加減なのに」
ローズは毎日僕が帰ってくるとその表情の変化を最初に見ている。一体どこで身につけたのか、よほど観察眼が優れているようで些細な違いでもあっさり見抜いてしまうのだ。
「何でもないよ、ちょっとしたアクシデントみたいなもの」
「ふーん、今までにないくらい女の子の匂いが強いけれど、どんなアクシデントならそうなるのかしら?」
「少し話をしただけだってば。しかも向こうが一方的にやってきて……」
「ま、突っ込んだことは聞かないであげる。とにかくシャワー浴びて着替えてくるといいわ、少し汗ばんでいるみたいだし」
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