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「死にたくなるくらい離れたくないなら、離さないで。僕は君を忘れたくない。そばにいたい」
押し込めていたものが胸の奥底で一斉に騒ぎ出す。人間に対しての過度な自己主張は禁止。規則違反。緊急事態。
「だから命令して?」
ただ見上げるしかできないオレを促すように、人工物のはずの薄紫の瞳が切羽詰まったように艶めく。どうしよう、苦しい。息ができない。なにかがものすごい勢いで太陽へと手を伸ばしてゆく。繋いだてのひらが熱い。
「……ユキのしたいように、しろ」
スカスカな声をやっとのことで絞り出すと、一瞬の間のあとで豪快に笑い飛ばされた。
「そんな笑わなくてもいいじゃん」
「ほんっと筋金入りだね、和希」
笑いを含んだ唇が、むくれた言い訳を飲み込むように触れる。ユキがこんなにも冷たくて心地よいのは、オレの身体が熱を孕んでいるからだ。頭の片隅でそれを悟ったとき、危うく窒息しそうになった。
了
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