アオイカタマリ

9/9
前へ
/9ページ
次へ
「死にたくなるくらい離れたくないなら、離さないで。僕は君を忘れたくない。そばにいたい」  押し込めていたものが胸の奥底で一斉に騒ぎ出す。人間に対しての過度な自己主張は禁止。規則違反。緊急事態。 「だから命令して?」  ただ見上げるしかできないオレを促すように、人工物のはずの薄紫の瞳が切羽詰まったように艶めく。どうしよう、苦しい。息ができない。なにかがものすごい勢いで太陽へと手を伸ばしてゆく。繋いだてのひらが熱い。 「……ユキのしたいように、しろ」  スカスカな声をやっとのことで絞り出すと、一瞬の間のあとで豪快に笑い飛ばされた。 「そんな笑わなくてもいいじゃん」 「ほんっと筋金入りだね、和希」  笑いを含んだ唇が、むくれた言い訳を飲み込むように触れる。ユキがこんなにも冷たくて心地よいのは、オレの身体が熱を孕んでいるからだ。頭の片隅でそれを悟ったとき、危うく窒息しそうになった。               了
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加