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「なに、大丈夫。無茶はしないさ。背中に天使を乗せているのでね」
「そうですか。あとフレーム曲がったままなんで、多分右に流れますから」
「わかった。左に舵を切りながら飛ぼう」
呆れる整備士は嘆息しつつ、片手を差し出してきた。ガーデルマンは一瞬何事かと思ったが、慌てて牛乳の空き瓶を渡した。受け取るとどこか哀れむような目が見えた。少年かと思っていたが、利発そうな少女の顔がそこにあって驚いた。
「お嬢さん、運がなかったねぇ……」
「えええーー!? なんですかその言い方!?」
思わず叫ぶと、風防を無言で閉じられた。梯子を外して離れていく。
「ちょ、ちょっと、少佐殿」
「ハンナでいいよ、可愛い天使。ところで、天使。君の名前は?」
「ウルスト・エンリヒ・ガーデルマン上等兵であります」
「可愛い天使。よろしくガーデルマン。どうか死なないように、お互いたくさんの敵を倒そうじゃないか」
ははははと高らかな笑い声をあげて、機体は滑走路に入る。
「ハンナ・ウルリッヒ・ルーデル。第二飛行大隊、第一急降下爆撃小隊、出撃する」
魔王を乗せた、巨大な人型爆撃機が空を舞う。
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