ははは、見ろ。今日も世界は広いぞ!

18/28
前へ
/34ページ
次へ
「なに、大丈夫。無茶はしないさ。背中に天使を乗せているのでね」 「そうですか。あとフレーム曲がったままなんで、多分右に流れますから」 「わかった。左に舵を切りながら飛ぼう」  呆れる整備士は嘆息しつつ、片手を差し出してきた。ガーデルマンは一瞬何事かと思ったが、慌てて牛乳の空き瓶を渡した。受け取るとどこか哀れむような目が見えた。少年かと思っていたが、利発そうな少女の顔がそこにあって驚いた。 「お嬢さん、運がなかったねぇ……」 「えええーー!? なんですかその言い方!?」  思わず叫ぶと、風防を無言で閉じられた。梯子を外して離れていく。 「ちょ、ちょっと、少佐殿」 「ハンナでいいよ、可愛い天使。ところで、天使。君の名前は?」 「ウルスト・エンリヒ・ガーデルマン上等兵であります」 「可愛い天使。よろしくガーデルマン。どうか死なないように、お互いたくさんの敵を倒そうじゃないか」  ははははと高らかな笑い声をあげて、機体は滑走路に入る。 「ハンナ・ウルリッヒ・ルーデル。第二飛行大隊、第一急降下爆撃小隊、出撃する」  魔王を乗せた、巨大な人型爆撃機が空を舞う。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加