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第二次欧州戦争、後に世界大戦へと広がる今戦争。
その渦中、欧州の東の空には魔王がいた。
「ははは、見ろ。今日も世界は広いぞ!」
足元に広がる鉛色の雲海。右前方から曙光が差し、世界は黄金色に染まりつつある。
その海を泳ぐように飛ぶ、不出来な人形のような爆撃機の編隊。その先頭機。
「空は青い! 大地はこんなにも広大で、人々を、愚かな私達を母のように愛でてくれる。ああ、世界よ、世界よ! 私は世界よ、あなたに万の感謝を謡いましょう」
あらゆる人々に畏怖され敵国の最高指導者から全人民の仇敵と大総統を差し置いて指名されている魔王。
それなのに魔王は、広がる蒼穹の美しさに目を細め慈しむように微笑む。
雲海が途切れ、戦火によって焼かれた灰色の大地が姿を現した。
「見ろ! ロートマン! 敵だ! 敵の戦車だ!」
「そりゃ少佐、ここは敵陣地ですから!」
新たに展開するのだろう、戦車を起点とした機甲歩兵大隊の姿が見えた。
「戦車は、全部、一つ残らず壊すぞ! いくぞロートマン!」
操縦士は笑い、スプリットSの要領で機体を急降下させた。
恐怖と栄光の象徴として君臨した、大空の魔王が東の空にいた。
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