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重たい砲声。そして音の二倍近い速さで飛び出た弾丸と敵機は、再開を喜ぶ恋人同士のようにぶつかり合い、燃え上がり、炸裂した。
「ガーデルマン!? 今のは?」
驚くルーデルに返答はせず、というよりそうしなければならないということすら白濁した意識は忘れていた。
黙々と敵機へ点射による有効打撃を続けるガーデルマンに、気分を良くさせたルーデルは満面の笑みを浮かべていた。
「素晴らしい! 素晴らしいぞガーデルマン! 君は天才だ!」
笑う彼女。しかしその目は次へ、さらにその次へと獲物を捕らえては追い込んでいく。
ガーデルマンが二機目に直撃弾を与えた時点で、ルーデルの飛行に変化が現れた。
前方の37ミリが狙えるようにではなく、後部対空機銃が狙いやすいように飛ぶようになっていた。
それによってガーデルマンが、より楽に敵機に打撃を与えやすくなる。撃墜に至らなくともダメージを負った機体は戦闘機動がとれず、僚機によって着実に母艦から引き剥がされていく。
そしてついにその時が来た。
目の前に広がる巨大な空中空母の側面。
「ははは! なんてデカさだ! なんて馬鹿らしいデカさだ!」
笑うルーデルは空になった脇腹の燃料増槽を排除し、操縦桿を引き倒しスロットルスラストレバーを目一杯に開いた。
猛烈な加速度が体を押しつぶしにかかる。機体は寝そべっているため、ガーデルマンからすれば背中から押しつぶされているようで、それによる吐き気も比ではない。
高度は瞬く間に8000を超えた。上昇限界ギリギリまで登った。
「身を固めて、奥歯をきつく噛み締めてくれ。急降下爆撃を実施する」
今度は急激な減圧に意識を手放しかけたガーデルマンは、もはや本能でルーデルの忠告を守った。
急降下爆撃。それは、魔王、ハンナ・ウルリッヒ・ルーデルの代名詞とも云えた。
彼女のそれは主翼を畳み、限りなく直角に近く、戦闘機の水平飛行に匹敵する速度で獲物の脳天へ向かって文字通り突貫する。
機甲兵器や拠点というモノは、総じて脳天攻撃に弱い。その為音速に近しい速度で叩き付けられる50キロ爆弾や、37ミリ機関砲の弾丸を防げるものは存在しない。故に急降下爆撃による脳天攻撃は、機甲兵器や拠点に対して非常に有効である。
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