ははは、見ろ。今日も世界は広いぞ!

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 見事敵戦力を撃滅させ、凱旋した彼ら。  意気揚々と滑走路に降り立つと、それぞれ風防を開けて立ち上がると真っ先にルーデルへ称賛を送る。 「少佐どの! やりましたね! 空中戦艦撃沈ですよ!」 「なぁに! 君たちが背中を守ってくれたからさ! それより君だって二機戦闘機撃破だ! 指令に昇進と一時帰宅許可の申請を出しておく!」  機体をすぐに下り、部下たちを褒めて回る彼女を、後部座席から見守る。  本当は今すぐに機を降りてシャワーを浴びたいが、恥ずかしすぎて降りれない。  ここは9対1で男性が多い。その中を粗相で汚したズボンのままで歩いて官舎へは戻れない。  一度整備場から全員いなくなるまで待つか。いや、この機だって必ず整備するはずなのだからここにいてもいつかは必ず整備士と直面する。  どうするべきか、頭を抱えていると突然風防が開いた。 「あんたも、ツイてるんだか、ツイてないんだかねー」 「うあ!?」  突然右側面から顔が出てきて、飛び上がる。  慌てて体を縮めて何とかならないか試みるが、よくよくすれば、すでに後部席全体が臭うため、隠しようがない。 「アタシ整備士のマティルデ。よろしく!」  にっこーと少女のように笑う女性。年は、もしかしたら同じくらいかもしれない。右手を笑顔で差し出され、条件反射のようにその手を握り返す。  上下に一度振った彼女は、ぐいと身を乗り出して後部席を覗き込んだ。 「お、被害軽微だね。よかったよかった」 「よ、よくなんてないですよ……ッ!」  とにかく今は恥ずかしくて死にそうだ。下半身を隠そうともがいていると、マティルデは袋をひとつ投げ込んできた。 「ちゃちゃっと着替えちゃいなよ。後はやっとくから」 「……ふぁ!? ここで!?」  ここで着替えるのかと、我が耳を疑う。なにせここは格納庫の中で、目下にはたくさんの男性がいる。これ以上の羞恥を重ねろというのか。  冗談にしてもキツいと目で訴えるが、確かに今一番まともに思える。 「大丈夫だよ。ここならアタシ以外は誰にも見られないから。それはアタシが保証するよ。だからほら!」
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