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「お、丁度だったね」
「うあ!?」
またしても突然のマティルデの出現。
「ほいじゃ、ささっと出て行ってー」
後部席に手を突っ込み、濡れた服を下着ごと丸めて袋に押し込み渡してきた。今後マティルデに対して羞恥心が芽生えないかもしれない。
「ささ、どーぞ」
あまりに衝撃的すぎて呆然としていると。マティルデはひょいと身軽に梯子から身を横に迫り出した。
落ちる! と思い咄嗟に手を差し出した時には、彼女は片手で機体の無線機基部に捕まっていた。
「す、すみません!」
「あんたよく謝るねー」
大急ぎで後部席から出て、降りる。思えば後始末を人にされると思うと恥ずかしいが、戦闘機の事は全くわからないから仕方がない。堪えるしかない。
機体を降りると、操縦士たちが集まっていた。
「お嬢さんが今回の少佐の後ろだったのか!?」
「こいつは驚いた……」
瞠目する彼ら。当人が一番驚いているのだから、当然である。
「あ、あの、こんにちわ」
わからないが、とりあえず挨拶しておこうと思った。彼女の部下たちにはまだしていない。お辞儀をしておくと、彼らはどこか遠くを見る様な目をしていた。
「まー、ルーデル機の予備の後部席ってことで。ほらほら! さっさと仕事にもどんな!」
驚く操縦士達へ、マティルデの一括。蜘蛛の子を散らすように散らばる操縦士達。
まさか一介の整備士のはずが、そこまで彼女は階級が高かったのだろうか。そもそもルーデルの事を階級ではなく名前で呼んでいたし。
まずいことをしたと重い気分になるが、この時はまだ飛行士と整備士のパワーバランスを知らなかった。
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