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ガーデルマンは待機室に戻ると、突然抱擁された。
何が起きたか、何をされたからを理解する事すらままならず戸惑う。
「ああ、ガーデルマン! ガーデルマン!! 素晴らしい! 君は最高だ!」
抱擁の騒ぎではなかった。
抱き上げられ、まるで子供をあやすようにくるくると回りながら満面の笑顔で、ガーデルマンが少しばかり自信をもつ胸に頬ずりしていた。
「え、や、えぇ!? しょ、少佐殿!?」
「ああ、私だ! ロートマンも中々良い男だったが、君はそれ以上だ! こんなに素晴らしいと思うのはどれくらいだろうか!」
全身全霊で歓喜を表す彼女に、抵抗しようにも階級という超えられない壁を前になすすべなくされるがままになる。
気恥ずかしさと戸惑いでどうするか対応に悩まされていると、突然ぴたりと動きが止まった。
「ガーデルマン。シャワーを浴びにいかないか?」
真顔で言われてしまえば、そもそも粗相の後だと思い出して、顔面の血行がさらに増加する。
とにかくしっかりと腰に回された腕を解いてもらいたいが、そうもいかない。そのまま抱き上げられたままどこかへ歩き出してしまう。
「あ、あの! 少佐どの!」
「ハンナでいいよ。2人きりの時はね」
妙な艶やかさを含みながら、彼女がささやく。その響きにぞくりと胸が鳴る。
待機室のすぐ隣にはシャワールームがある。一度の空戦を終えると、思いのほか全身が汗で濡れているためだ。
「私はね。出撃して帰ってくると必ずシャワーを浴びる事にしている」
鼻歌でも唄いそうな調子で呟く彼女は、そう言いながらガーデルマンを下ろした。
10室に区切られたシャワールーム。区切りは必要最低限しかなく、覗き込もうと思えば隣の区画を見ることができる程度。胸元と太ももあたりまでしか仕切りはない。
今は誰も使っている者はいないが、ここは男女共有である。先ほどまで誰かが使っていたであろう痕跡はある。
そこで彼女は躊躇いなく身包み一切を脱ぎ捨てた。
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