ははは、見ろ。今日も世界は広いぞ!

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 大参帝国北東部、通称東部戦線。第二次欧州戦争のきっかけともなった、旧ポルスカ共和国の中部にある空軍基地のひとつ第五基地。  東部最大の航空基地にして、最前線へ物資を分配する重要拠点である。制空権、兵站線どちらの意味でも最重要拠点であり、帝国国土東方5分の1を守備範囲にする。そのためここの陥落はとはつまりその分の国土喪失を意味する。  その事情が分かりきっていながら、稼働が高く、まして前線がじわりじわりと近付いてくるということは、いよいよ祖国の危機なのかもしれない。 「本当に大きな基地……」  見渡す限り敷地内である。航空基地であるため、元々は低地湿地帯だったこの場所を開墾し埋め立てて6つの滑走路が作られた。それから兵站線の統合、物資の集積。野戦鉄道の敷設や、大型輸送機の離発着となり、開戦の5年前から怒涛の勢いで巨大化して行った。 「ほらほら、退いて退いてー。次の便来るから急いでー!」  若い整備士が蹴散らすように滑走路へ牽引車を乗り入れると、今ガーデルマンが乗ってきた大型輸送機を牽引して走り去る。補給と整備を行い30分後には貨物と乗員を乗せ飛び立つはずだ。  邪魔だとどやされて慌てて荷物を担いで滑走路を離れると、同じように慌てて滑走路から離れた十数名が集められていた。そのほとんどが自分と同じ歳頃の少女たちだ。 「ガーデルマン上等兵! ウルスト・エンリヒ・ガーデルマン上等兵はどれだ!?」  名簿を片手に叫ぶ兵站伍長。慌てて駆け寄り敬礼する。 「はい! ここにおります!」 「お前がガーデルマン上等兵か!?」  いったい何が楽しくてそうさせるのか分からないが、間近にいるにもかかわらず声を張り上げる伍長。声のたびに唾が顔にかかるのが非常に不愉快だが、拭う事は当然許されない。 「小官が、ウルスト・エンリヒ・ガーデルマン上等兵であります!」 「そうか! お前で最後だ! 荷物はその台車に載せろ! 担当官が官舎まで運んでおく!」  言われた通りトランクケースが人数分山積みされた台車に、自分の荷物を詰め込んだトランクケースを載せる。  それを見た兵站伍長はついてこい! と叫び大股でがつがつ歩き出す。全員少し駆け足で追いかける。荷物は若い兵站兵がノロノロ運んで行った。
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