「シャワーを浴びて、牛乳飲んだら、さぁ! 出撃だ!」

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日差しが眩しい。 ひどく体が重いし、至る所が軋む。 薄ぼやけた視界に、誰かいるのは見えた。 さて、なにがあったのか。 たしか、東部方面第五基地へ配属され怒涛の治療の嵐をやり過ごした。そして、そうだ。 「やぁ、可愛い私の天使。ぐっすり眠れたようだね」 突然の声は、目の前の誰かからだ。 目を擦り、もう一度よく見る。そこには非現実がはめ込まれているようだった。 端整に均等のとれた目鼻立ち。切れ長の目は今は楽しそうだ。色付きのいい唇はふっくらとしているが自己主張は強すぎず、それでいて適度な存在感がある。 赤金色の髪の毛を?き上げる彼女は、楽しそうに微笑み、ガーデルマンの額にそっと唇で触れた。 「え、あ、え、え? 少佐殿!?」 その半ば現実離れした美しい容姿をしているのは、間違いなく、ハンナ・ウルリヒ・ルーデル空軍少佐その人だ。 「ハンナでいい。2人きりの時はね……」 そっと耳元で、どこか悪戯に囁かれて、顔面から炎と口から心臓が飛び出しかける。 その反応が良かったのか、彼女はクスクス笑みを浮かべながらベッドから立ち上がる。よくくびれたウエストラインから降りる豊かな臀部、そして長い足と繋がっていく。いくつも傷跡があるが、白く美しい肌はきっと触れればその手触りからいつまでも触れていたくなるはずだ。 「って、はだかっ!?」 隠す気も毛頭ないという堂々とした彼女。それを見た方はたまったものではない。 それがただの人の裸体なら、眉を顰めておしまいだ。彼女だとそうは行かない。 ハンナ・ウルリヒ・ルーデルという爆撃機乗りは、その撃破数に裏付けられた卓越した操縦技術だけではない。その外見ですら神は不公平にも個人を愛しすぎている。そう言わざるを得ないのだ。
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