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「いや、君は今日から私の相棒だ。なに、私の名前で君の転属命令は申請済みだ」
安心したまえと満面の笑みを浮かべた彼女だが、ガーデルマンの顔面は絶望に染まっていた。
そんなガーデルマンの気なぞ歯牙にもかけず、彼女は笑顔のまま格納庫に向かった。
「ま、まってください!」
「待つ必要なんてどこにもないさ! さあ! シャワーを浴びよう」
一介の少佐に他軍の兵員を引き抜くなんて事は出来ない。できないはずだが、彼女ならやりかねない。そして実現させるだろう。
どちらに転んでも絶望の色しかないのは、目に見えている。
なにせ間違いなく今のガーデルマンは脱走の嫌疑がかけられているはずなので、原隊に戻れば間違いなく懲罰が待ち構えている。はずだ。
しかしここに残れば彼女の後部席に座らなければならず、それは死と紙一重か、むしろその瞬間は死と重なっている状態ではないのかとすら思えた。
つまるところ、どちらもあまり良い選択ではなく、しかし第3の選択肢は今のガーデルマンには見えていない。
だがどれだけ悲嘆しようが、彼女はガーデルマンの腕を引いて格納庫の搭乗員控室へ進んでいく。抗う術は、なかった。
シャワー室へ連れ込まれ、熱めのお湯を浴びて、飛行服へ袖を通す。ちなみに下着は当然の事ながらなかったので直接着ている。
「なんとか直しましたけどね。でも、どこで不調出るかわかりませんからね」
整備記録を確認しながら話すまマティルデに大丈夫大丈夫と言って応える彼女。それに嘆息しガーデルマンを見た。
「一応言っておくと、墜落して、まだ生きてたら何が何でもこの人についてきな。そうすれば死にはしないから」
なんとありがたい助言か、ガーデルマンは己の定めを呪いながら固定帯の確認を行う。
昨日と同じように手順を踏んで、そしてまた空へ上がる。
今日は雲が薄く、見通しは非常に良かった。ガーデルマンとしては、雲海が見れずすこし残念に思った。
「ああ、いた、いたぞ! いたぞいたぞ! 見ろ、ガーデルマン! 戦車だ!」
防衛線ぎりぎりを飛行中、彼女はまるで恋焦がれた人との再会に歓喜する少女のように声を上げた。
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