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プライドよりも欲しい物
「君は、何を言っているの??」
彼女の言葉にあぜんとした
平然を装ったつもりの顔も今では、あんぐりと口をあけている
俺の伝えたかった事、一つとして彼女に届いていなかったのだと思うと
目の前が真っ暗になるような思いだった
「あははははh
なんて顔してんのよ!!」
心が折れる。好きな人に勢いで告白めいたセリフを
あつく伝えたのに何も届いていない
男の恥だ・・・こんな俺では、告白など遠いとおい未来だ
「なに、この世の終わりみたいな顔してるのよ」
誰のせいだと思ってるんだ!!!
「君こそ灯台もと暮らしなんじゃない?
よく見なよ。私は、今、隣にいるんだから・・・・
ほら!手ぐらいすぐにつなげるじゃん!!」
素直に自分の心が春の日だまりのように高揚するのがわかった
「手を伸ばしてた距離は、気づいたら詰まってるもんなんだよ
それに私は、完璧じゃないし
なんでもこなせたら人生は、きっとつまらないよ。刺激的な方がいい
君が私の事を完璧だと思うのは、隣の芝が青く見えるだけだと思うな」
そういって彼女は、手を離した
「じゃ!先に戻るね」
そういっていつもの笑顔でオフィスに戻っていく
彼女の手の小ささが、肌触りが、鼓動が手から消えない
この高揚感も手の感触もいつか
今も忘れられないと思い出すのだろう
思い出にしたくない!!
思い出にしてなるものか!!
あの手の温もりを忘れるぐらいなら
男のプライドなんかいくらでも捨ててやる!!
そう思った時には、彼女の手を掴んでいた
少し汗ばんで赤くした顔にはぁはぁと荒い息づかいで
「俺と・・はぁはぁ・・結婚してくれ!!」
オフィス街に高らかに告白を叫んでいた
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