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その日は突然やって来た。
その日も、私と透は踊り場でお昼を食べていた。透は今日もお昼を忘れていたので、私のお弁当を食べている。
いつものような平和な時間。でも、どこか透の表情が冴えないような気はしていた。
「ねー美波」
「なに?クレープおごってくれる気になった?」
「告白された」
私は息を呑んで、透の目を見つめる。綺麗な二重の瞳と視線が重なった。
「…また断ったの?」
一瞬だけ躊躇して、私はそっと問いかけた。
イケメンで人当たりのいい透にとって、告白されることは特別珍しいことではなかった。しかしその一方で、本人はあまり興味がないらしく、全て断ってしまっているようだった。
けれど。私は首を傾げる。彼が告白を断ることは知っているものの、実際に彼の口から告白について聞くことはほとんどなかった。
なのに、何故今話に出したのか。
心臓が一瞬、ドクンと大きく脈打つ。
…果たして、彼はゆるゆると首を横に振った。
「…付き合ってみるとこにした」
時が、止まったような気がした。
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