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眠い目をこすりながら朝食と着替えを済ませる。いつものようにスマホを手に取って、私はしばし逡巡した。何度か透の連絡先を呼び出そうとし…私は思い切ってスマホをカバンに突っこむ。 外に出ると冷たい風が頬を撫で、私は小さく身震いをした。春とはいえまだまだ朝は寒い。 「あっ美波きた!」 教室に入るなり私はクラスメイト達の質問攻めにあうことになった。 「星川くん彼女できたの?!」 「美波はそのこと知ってたの?」 「大丈夫?彼女から文句とか言われてない?」 私は曖昧に笑って誤魔化した。そもそも、私は彼女が誰なのかも知らない。この調子では周りの方がよっぽど詳しそうだ。 その時、ふいにスマホが震えて着信を伝える。画面を確認すると…。 「…もしもし」 『…おはよ』 電話の主は透だった。人気のない廊下へ出て、私はなるべく冷静な声になるように気を付けて尋ねる。 「どうしたの?」 『…電話くれなかったから寝坊した』 拗ねたような透の声に私は少しだけムッとする。こっちの逡巡も知らずに。 「彼女いるのに私がかけたらおかしいでしょ。そもそも私がかけなきゃいけない訳じゃ」 『分かった』 そう言って電話は一方的に切れた。私は思わず胸を押さえる。…聞き慣れない、透の冷たい声。 無性に苦しくて、呼吸がうまくできなかった。 それからなんとなく上の空で、私は集中力を欠いたまま半日を終えた。昼休みもまた質問攻めにあうのが目に見えていたので、先手を打ってチャイムと同時に教室を出た。 しばらく校舎をウロウロした後、私は図書室へ行くことにした。お腹も空いていなかったので、適当に本を見て過ごそうと思った。 「…あの、真山先輩ですか」 突然後ろから話しかけられたのは、一冊の本を手に取った時だった。 電撃に打たれたように固まってしまい、私は振り向くことができない。 「ちょっと、いいですか?」 ぎくしゃくと本棚に本を戻す。私は自分の勘が外れてくれることをひたすら祈った。
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