1/11
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

私の朝は幼馴染へのモーニングコールで始まる。 眠い目をこすりながら朝食と着替えを済ませ、鏡の前で身だしなみを整える。充電器に差しっぱなしのスマホを手に取る頃にはもうすっかり脳も起きていて、私の指は軽快にある番号を探し出していた。 …。コール音は確かに鳴っているが、電話の主は応答しない。これも毎日のことなので、私はため息をつくと諦めて学校へ向かうことにする。 登校の途中で折り返しが来るのもまたいつものこと。私は白い息を吐きながら、スマホを耳にあてた。 「おはよう」 『もう美波出ちゃった?』 「当たり前でしょ。今起きたの?」 んー…と不明瞭な声が電話越しに聞こえる。それが答えのようなものだった。 「今日は急ぎなね?透は今週既に遅刻してるんだから」 わかったー、と間延びした声が聞こえ、私は脱力する。…本当に大丈夫だろうか。 そんなことをしているうちに、わりとギリギリの時間になってしまい私は早足で教室に向かった。 朝のHRを終え、束の間の空き時間。私が教科書の準備をしていると、騒がしい廊下から女子の声が聞こえてきた。 「あっ星川くん!今日来ないのかと思った~」 「今日はなんとか間に合ったよー」 ゆるいその返答に私は眉をしかめた。勢いよく廊下へ出ると、その姿を探す。 「あっ美波おはよ」 「間に合ってない!結局遅刻してんじゃない!」 無邪気に笑う幼馴染…星川透の姿を見つけると、私は思わず雷を落とした。しかし。 「ごめんごめんー。ところで美波今日お弁当持ってきた?」 馬耳東風とはかくの如し。 「お昼も財布も忘れてきちゃって」 そう言うと透はヘラっと笑った。その笑顔に、周りの女子が騒然とする。 …会話の内容が聞こえていない女子たちにとって、彼の笑顔は魅力的に映っているのであろう。 端的に言うと、彼は顔が物凄く整っているのであった。 「あーはいはい」 私が周囲の注目に面倒臭くなりそう返すと、彼はありがとーと呑気に笑い自分の教室に入っていった。残された女子たちの視線が痛い。 幼馴染って役得だよねー。そんな声が聞こえたような聞こえなかったような。私はもう慣れっこなので無視して自分の席へ戻る。 「美波また星川くんに説教してたのー?」 「黙ってれば超イケメンなのにねえ」 クラスメイト達の冗談混じりの声に、私は今日何度目かのため息をついて苦笑した。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!