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「詳しいことは現地で見てくれよ。最悪の場合、大規模なレクイエムの合唱になるだろうから、君にも参加してもらいたいんだ。もう何件も断られてるんだけど……この手の仕事はホント、人気ないからなぁ」
エファーリムが顔のパーツを中央に寄せ集めたような顔をして悔しがる。綺麗な顔を惜しむことなく盛大に歪める上位天使の姿に、ユーリィは苦笑した。
「死や病、下の世話。ケガレを扱う仕事は人間の世の中でも嫌われがちです」
「だよねー。気持ちはわかるけどさー。でもねー」
「分かりました。大丈夫です、僕は行きますよ。『殻拾い』の異名は伊達じゃありませんから」
「そう卑下しないでくれよ。助かっているんだから。近いうち君にも、命を芽ぶかせる天使の歌を歌って欲しいものだね。もしかしたら、今回君の元に卵がくるかもしれないよ?」
エファーリムの明るい声に、ユーリィは押し黙った。
「……死を弔う歌が、僕には似合いですよ」
ポツリと呟かれたその言葉に、レキは眼光鋭くユーリィを見上げる。
村を包む炎、土砂まみれの遺体の海、ユーリィの瞳は、ここではないどこかを見つめている。
(あぁ……そうか、君はまだそこにいるんだね。) エファーリムは瞼を閉じる。
そして、ユーリィのほおを両手でつつむと、頭頂に唇を落とした。
「君に、神の祝福があらんことを」
ユーリィは、レキと共に風の谷へと向かった。
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